右巻き
ジンクス――と呼べるほど立派な物ではないが、ベルトを右回り(時計回り)に巻くと力が出ると知ったので、ずっとベルト右巻きを続けていた事があった。
なんでも、人間の体は右回りの流れで出来ているから、ベルトを右巻きにすれば、筋肉に余計な抵抗がなくなり、普段よりも力が出るそうだ。実際にスポーツ番組でウェイトリフティングの選手がコルセットを右巻きにして、普段以上のバーベルを上げた姿にはそんな簡単にパワーアップできるものなのかと感動したのである。
そこで、早速ベルトを右巻きにして試してみたのだが、左巻きから右巻きにしただけなのに、左巻きに慣れきっている頭は混乱して非常に都合が悪い。元々、ベルトを通す作業は無意識の流れなので、考えることなく通そうとすれば滞る。しかし、ベルトを通すだけなのに考えてしまうとそれこそストレスが溜まる。でも、右巻きだけでパワーアップ。この手軽さを考えれば多少のストレスは我慢できた。
暫くして、友達が着替えている時に気付く。ベルトが右巻きだ。その友だけじゃなく、他にも数人いる。テレビの影響力は恐ろしい。そして、みんなパワーアップしたかったのである。
一年くらい経過しただろうか、その頃になると右巻きも無意識の作業になったが、右巻きは私だけでした。これはどういうことかと言えば、続けていても実感がないのである。別にバーベルを持ち上げるほど、極限の力を発揮する舞台がそんじょそこらにないので、右巻きしている意味を見失ってしまうのだ。
結局、今の私は左巻きで過ごしているが、極限の力を発揮する舞台さえあれば、右巻きで行こうかなとは思っている。
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